◆老子小話 VOL 400 (2008.07.12配信)

衆生顛倒

迷己逐物

(碧巌録)

 

衆生は顛倒して

己に迷いて物を逐(お)う

 

顛倒とは、ひっくり返ること。

本来大事なものとどうでもよいことを

取り違えることである。

情報があふれかえる世の中だが、

本当に必要な情報はそんなに多くない。

大学生から小学生まで、ネット検索して

他人の文章をそのまま拝借し宿題を出す。

どうでもよい情報で表面を飾って、

事なきを得ようとすること自体が、顛倒である。

最早、現代人は「己に迷わず」

物を逐っているのかもしれない。

迷う暇さえ惜しんで。

人は、そもそも不器用にしか生きられない。

それを要領よく生きようとするから、

顛倒したり、物を追ったりする。

他人の物まねをしても、自分の人生にはならない。

何故なら、人それぞれルーツが異なり、

人それぞれ死のタイミングが異なるからである。

不器用でも自分で考え、

自分で選択する人生だから、

生きている実感が味わえる。

「己に迷う」余地が残されていれば

まだ救いはある。

 

記:有無相生

 

 

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