◆老子小話 VOL 372 (2007.12.29配信)

持而盈之、不如其已。

(老子、第九章)

 

持して之を盈(み)たさんとするは、

その已むに如かず。

 

器を水で一杯にして持ち歩くのは、

器を空にするには及ばない。

貯め込むことで、身が重くなる。

旅行で荷物が多いと、行動範囲が狭くなる。

逆に荷物が少貯えた者は、

それを失わないように心配になる。

知識を頭に詰め込むと、

それが邪魔して正しい判断ができない。

それでは、何もせずにぼけっとすればよいのか?

老子は、器を満たしても、それにこだわるなという。

器に穴が開いていれば、入れたものは自然に抜ける。

モノが貯まれば、自己の周りの世界に施していく。

人間の身体はよくできていて、

知識は、自然に忘れられていく。

忘れまいとするから不安になる。

忘れたら、また入れればよい。

何回も繰り返すと、次第に器(身体)にしみ込む。

それは器に穴が開いているのと同じで、

器を自然と空に保ってくれる。

身体全体で世界を受け止めると、

自己と世界の区別は消えていく。

区別が消えると、世界(=器)は限りなく広がる。

そうすれば、器は最早盈つることはない。

これまた、器が空になることではないか。

では、よいお年をお迎えください。

 

記:有無相生

 

 

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