◆老子小話 VOL 356 (2007.9.08配信)

月天心 貧しき町を 通りけり

(蕪村)

 

中空にぽっかり浮かぶ、満月。

その満月が、貧しき町を通り過ぎる。

「月天心」という言葉が印象的である。

天の中心に浮かぶ月。

今の日本が忘れたものを象徴している。

それは、真心であり、憐みであり、

思い遣りといってもよい。

貧しき町とは、モノは溢れていても、

心は貧しき町のようである。

社会保険庁職員の年金横領は、

世も末といった始末。

いくらトヨタが生産量でGMを抜いて

世界一になっても、心の卑しさは

貧しき国を造っていく。

人が見ていなければ、不正をやり続ける。

入閣した政治家は、記載ミスとうそぶく。

「月天心」は、富や地位よりも大事なものが

あるだろうと語る。

「月天心」は、天空から見下ろすだけではない。

貧しき町を同じ目線で通り過ぎている。

虚無僧のように、昔なら、どんな町にもいて、

誰もが見かけた、ひとの「真心」である。

互いに、日々の生活で助け合う習慣を忘れた日本。

たとえ経済的に貧しくたって、

「月天心」を見据える心の眼があれば、

世の中、月明かりの分だけ明るくなる。

 

記:有無相生

 

 

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