◆老子小話 VOL 355 (2007.9.01配信)

秋きぬと 目にはさやかに 見えねども

風の音にぞ おどろかれぬる

(藤原敏行朝臣、古今集)

 

秋が訪れたことは、

目にはっきりと見えないが、

風の音を聞くと

はっとそのことに気づく。

 

暑い夏が続いたが、

9月1日の今朝は涼しい風が吹いた。

風の音は、風が作る音であり、風が運ぶ音である。

風鈴の音であり、虫の音であり、

竹林のざわめきである。

自分の感覚だと、

ジーという夏の夜を暑く鳴く音から

リンリンという秋の虫の音に変わると

秋の到来を知る。

窓を開けて眠りにつけば、自然と、

外の音が聞こえてくる。

すずむしのりんりんが、

どことからともなく風に運ばれてくる。

その波動が、耳の奥から脳に伝わり、

お遍路さんの鈴のように、こころの浮遊を誘う。

「風の音」は、風の発生、風により音を出す物、

音を運ぶ風の流れ、その音を聞く人の聴覚、

そして、音から感じる感性の全てがそろったとき、

一瞬に生まれる感動を意味する。

自然との一期一会で得られる感動である。

ひとそれぞれに、秋を感じる今日この頃では

ないでしょうか。

 

記:有無相生

 

 

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