◆老子小話 VOL 353 (2007.8.18配信)

此亀者、寧其死為留骨而貴乎。

寧其生而曳尾於塗中乎。

(荘子、秋水篇)

 

此の亀は、寧ろ其れ死して骨を留めて

貴きを為さんか。

寧ろ其れ生きて尾を塗中に曳かんか。

 

この亀は、殺されて、その甲羅を留めて

大事にされることを望むか?

生きて尾を泥の中に引きずりながら

自由に暮らすことを望むか?

 

古代中国では、亀の甲羅を焼いて、

ひび割れた形を見て、吉凶を占った。

従って、亀の甲羅は大切に扱われた。

亀の身になれば、死んで甲羅として役立つのがよいか、

役立たずと呼ばれても、生きて、天(自然)より

与えられた命を全うするのがよいか問題となる。

この選択は、現代人の人生観の選択に重なる。

世のため、国のため、吾命を投げ打って、

お役に立つことが生きがいであるという人もいる。

いや、生きて、天寿を全うするのが、人間社会の

上位に在る、天から与えられた命であるという考えもある。

でも大事なのは、二者択一ではなく、バランスの問題だろう。

弱い存在の人間は、共同体を作り、外敵と戦い、

今日まで生き残れた。共同体への感謝の気持ちが

国家社会への貢献に繋がる。

共同体(家族、仲間、組織など)の存続のため、

戦うか、妥協するかの選択は、人生で度々起こる。

答えを出す前に、自分にとって共同体とは何なのか

を考えると、道が見えてくる。

 

記:有無相生

 

 

戻る