◆老子小話 VOL 350 (2007.7.28配信)

ふるさとに散るとも知らで我を待つ

老いたる母に如何に告げなん

(中田茂少尉)

風に散る花の行方は知らねども

惜しむ心は身にとまりけり

(西行)

 

神坂次郎氏の「今日われ生きてあり」

から特攻隊員の辞世を選んだ。

特攻は、日本本土に迫った敵艦に対し、

爆弾を積んだ戦闘機で体当たりして、

防衛の先陣を切った少年兵士である。

わが国の繁栄が、国を想う若き志の上に

築かれていることを忘れてはならない。

兵士がどのような想いで散華に至ったかを

神坂氏の本は冷静に見つめる。

特攻の拝命を、故郷で自分を待っている

老いた母親に告げず、死出に赴くときの、

「惜しむ心」を詠う。

自分が死んでも、明日に向かって、元気に

生き続けて欲しいという声が、恋人に、両親に、

新妻に、出陣まで支えてくれた女学生達に

残される。

青春時代は、思う存分、力の限り生きる時期である。

そんな時期に、立派に死ぬために操縦訓練し、

出撃前に遺書と辞世を残し、機銃掃射を浴びながら、

敵艦に突入していった若者がいた。

何故、散華しなければならなかったのか?

散華するときの「惜しむ心」は何だったのか?

戦争を二度と繰り返さないために考えて欲しい。

 

記:有無相生

 

 

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