◆老子小話 VOL 349 (2007.7.21配信)

可與言而不與之言、失人。

不可與言而與之言、失言。

(論語、衛霊公第十五)

 

ともに言うべくしてこれと言わざれば、人を失う。

ともに言うべからずしてこれと言えば、言を失う。

 

話し合うべき時に話し合わないと

その人の心をとらえることはできない。

話し合うべきでない時に話し合うなら、

言葉が無駄になる。

 

心を通わすのに、常に話し合うことが

必要かというと、そうではない。

話し合うべき時を見計らって、

対話すればよい。

恋人とけんか別れしたときは、

どっちが正しいか話し合っても、溝は深まる。

そっと独りにしてあげた方がよい場合もある。

年金問題や消費税問題は、国民と話し合う

機を逸した政府は、信頼を失った。

己の立場だけを考えて、「話し合うべきでない時」

と考えていたのであろうか。

「言を失う」は、「言葉が無駄になる」だけでなく、

場を読めない理性・感性を疑われる場合もある。

結局、「人を失う」結果となる。

今の世の中、言葉が意を伝える道具となっているが、

言葉以外の行為・態度により意を伝えた方が

ずっしりと心に響くこともある。

それがどんな場合か知っているのが知者であると

孔子はいう。

 

記:有無相生

 

 

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