◆老子小話 VOL 347 (2007.7.07配信)

すべて、何も皆、事のととのほりたるは、

あしき事なり。

し残したるをさて打ち置きたるは、

面白く、生き延ぶるわざなり。

(徒然草、第八十二段)

 

なんでもかんでも、

最後まで完成させてしまうのは、

味気のない仕上げである。

未完成のまま、やり残して置くのが、

味わいがあり、完成まで生き続ける

余地を残すわざである。

 

といっても、話題の年金制度のことではない。

住居で言えば、冷暖房完備のマンションより、

夏暑く冬寒い古家の方が、思うようにリフォーム

する楽しみがある。

西洋式庭園は、人工の秩序の美を追求するが、

禅寺の石庭には、自然に融け込んだ小宇宙がある。

自然の変化に伴う小宇宙の変幻は終わりが無い。

まさに、「し残したるをさて打ち置きたる」である。

最近の車を見ると、いろんな機能が付きすぎ、

本来のドライブの楽しみが失われているようだ。

快適性が重視され、車とドライバーが一体となり、

旅を共有している感覚が失われている。

路面の状況を振動で感じ、加速の状態を

鳴り響くエンジン音で感じられる車。

また、道に迷えば、地元の人に教えを乞う。

快適性では未完成かもしれないが、

その未完成が、「面白く、生き延ぶるわざ」

となる。

 

記:有無相生

 

 

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