◆老子小話 VOL 340 (2007.5.19配信)

彼出於是。

是亦因彼。

(荘子、斉物論篇)

 

彼は是に出て、是もまた彼による。

 

彼も是も相対的な概念という意味である。

英語で言うと、遠いものを指すとき、

THAT(彼)と呼び、近くのものを指すとき、

THIS(是)という。

つまり、自分と指す対象の距離により、

呼び方が変わるだけである。

彼を死(生の否定)、是を生とするなら、

人は生まれることにより死と向き合うから、

死(彼)は生(是)より出ることになる。

また、生の前には死があった。

今自分が生きているのは、

細胞が次々に死に、新たな細胞が生まれるからだ。

子供のときは、死は遠い存在だが、

歳をとってくると、死は身近な存在となる。

無限にあったはずの時間が無性に大事になり、

いつ死んでも悔いのない生き方を望むようになる。

是と彼を区別せずに、相対的な見方が自然と

できるようになる。

そうすると狭く見えていた世界が急に開けてくる。

二分していた価値の両極が、それほど変わらない

ことに気が付く。

せせこましい生き方から解放してくれる荘子の彼是

である。

 

記:有無相生

 

 

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