◆老子小話 VOL 333 (2007.3.31配信)
扇にて 酒くむかげや ちる櫻
<芭蕉>
桜満開の時期ですが、扇を広げて、
花見酒と洒落込む芭蕉さんです。
扇が盃ならば、酒はそこに降り注ぐ
桜となるのでしょうか。
実際の酒を酌み交わし、
花の宴に興じている方もいるかもしれません。
芭蕉さんは、旅の途中で見る桜なので
むしろを広げて、さあ花見というわけにはいきません。
やおら、懐より扇を取り出して、花陰に腰掛けて
散る花を扇に受けて、花見酒とするのが、
風狂といえましょう。
旅の途中でいつ死ぬかわからない
流浪の身であればこそ、今目の前にある
自然の美しさを肌身で感じることができ、
それに触れ合えた身の上を
感謝する気持ちが湧いてくるわけです。
酒などなくとも、桜の鮮やかさ、はかなかさを
肴に逍遙遊の世界に飛び込めます。
記:有無相生