◆老子小話 VOL 332 (2007.3.24配信)

春の海 ひねもす のたりのたりかな

<蕪村>

 

スローライフな味わいのある好きな句です。

「ひねもす」は、一日中という意味です。

春の海は霞がちで、

穏やかな光を浴びながら

ゆったりとしている。

「のたり」という表現がぴったりです。

海が「のたり」とするだけではく、

一日中眺めている自分の心まで

「のたりのたり」としてくる。

このような海の景色は、春だけでなく、

他の季節にも見られる。

でも、見ている人の心が、

のたりのたりしてくるのは、

春の海かもしれない。

「春眠暁覚えず」といわれるように、

春になると何故か眠くなる。

陽光を浴びながら

春の海をぼうっと眺めていると、

うっとりしてくる。

荘子の「胡蝶の夢」ではないが、

自分の心身までが、

「春の海」と同化したごとく、

のたりのたりしてくる。

これこそ、逍遙遊の境地です。

 

記:有無相生

 

 

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