◆老子小話 VOL 323 (2007.1.20配信)

人皆生を楽しまざるは、

死を恐れざる故なり。

死を恐れざるにはあらず、

死の近き事を忘るなり。

<徒然草、第九十三段>

 

生きていることを楽しめないのは

死というものが実感できていないためという。

死は直前に来るまで怖くない。

だから、死が絶えず直前にあることを

ただ忘れているから実感できないと

兼好法師は分析する。

生きていることのありがたさは、

死を自覚し、死を見ることから始まる。

何気なく一日を過ごしているとしたら、

明日死ぬとしたら、今日のうちに

何をしなければよいか考えるとよい。

そんなことをいつも考えていたら、

気が滅入ってしまうかもしれない。

でも、新聞やテレビで事故のニュースを見ると、

実際、死は突然やってくる。

死に直面する者も、死者を送る者も、

できることを今のうちにやっておくのが、

生きている価値といえそうである。

人の生き方は今も昔も変わらない。

 

記:有無相生

 

 

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