◆老子小話 VOL 319 (2006.12.23配信)

以富為是者、不能譲禄。

以顕為是者、不能譲名。

<荘子 天運篇>

 

富を以って是(ぜ)と為す者は、

禄を譲る能(あた)わず。

顕を以って是と為す者は、

名を譲る能わず。

 

富をよしとする者は、富に執着して、

己の富を他人に譲ることができない。

名誉をよしとする者は、名誉に執着して、

己の肩書きを他人に譲ることができない。

 

富とか名誉とかは、自分の努力だけで

得ることはできない。

己を取り囲む人たちの力添えがあって

初めて手にし得たものである。

それを勘違いして、当然であるかのように

それに執着しつづける愚かさを指摘する。

公僕であるはずの官僚や政治家が、

富や名誉に執着して引き起こす事件は、

毎日のように報道される。

一方、富も名誉もない人は取り残され、

富裕層と貧困層に二極化する。

国の富が、一極に集中し、

分配されずに一極の中で循環する。

そんな国に誰がしたかと嘆いてみても始まらない。

主権在民の民主主義では、国民が「そんな国」を

選択したことになっている。

 

記:有無相生

 

 

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