◆老子小話 VOL 274 (2006.2.11配信)
好而知其悪、
悪而知其美者、
天下鮮矣。
<大学>
好みてもその悪を知り、
悪(にく)みてもその美を知る者は、
天下に鮮(すく)なし。
好きな人でも、同時にその欠点をわきまえ、
嫌いな人でも、その長所をわきまえている
人は世間にあまりいないものである。
儒教の書「大学」からの言葉。
愛情に溺れたり、嫌悪の情に包まれると、
物事を正しく見ることはできない。
感情というものが、本質を見る眼を
曇らせてしまう。
儒教では、「わが身を修める」こと、
いわゆる修養によって、
感情に揺り動かされない自分を
保つことができるとする。
修養は、心を正すことである。
一方、老荘の教えは、
好きとか嫌いとか、長所とか欠点とか、
相対的な価値観に揺り動かされる
自分というものをまず捨てよと教える。
無我は知識を詰め込むことでは得られない。
修行の過程で体が覚えることである。
「心を正すこと」=「無我になり、心の本来の
姿が現れるようにすること」と考えると、
二つの教えは繋がってくる。
記:有無相生