◆老子小話 VOL 263 (2005.11.26配信)  

東洋人は

己れの置かれた境遇の中に満足を求め、

現状に甘んじようとする風があるので、

暗いと云うことに不平を感ぜず、

それは仕方ないものとあきらめてしまい、

光線が乏しいなりに、却ってその闇に沈潜し、

その中に自(おのずか)なる美を発見する。

<陰翳礼讃>

 

谷崎潤一郎の文化論エッセイの一説。

進取的な西洋人は、常に良き状態を

願って止まないので、電球や蛍光灯を

発明し、絶えず明るさを求めていく。

現代日本人の生活は西欧化して、

翳の美を見出すことは少なくなった。

人工的な光の中に美を生み出すのを

有為とすれば、自然が作り出す翳に

美を発見するのは無為となる。

無為は、現状満足とは異なる。

心を無にして、自然に融け込むひとときである。

闇に身を投じると、闇の中でしか味わえない

美しさが見えてくる。

 

記:有無相生

 

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