老子小話 VOL 1272(2025.04.12)

小人殉財、君子殉名。

其所以變其情、易其性、則異矣。

乃至於棄其所為而殉其所不為、則一也。

(荘子、盗跖篇第二十九)

 

小人は財に殉じ、君子は名に殉ず。

其の、其の情に変じ、其の性を易うるは、則ち異なれり。

乃(すなわ)ち、其の為す所を棄てて、其の為さざる所に殉ずるに至りては、則ち一なり。

 

今回の言葉は、荘子よりいただきます。

ちょっと長いですが、ポイントは最初の行です。

「小人は財のために命をかけ、君子は名のために命をかける。

その人情の自然を変え本性をゆがめるやり方は異なっている。

しかし、人間の為すべきことを捨て、為すべきないことに命をかける点ではまったく同じことである。」

一言でいえば、自分の本性に従って生きろということ。

自分の本性をゆがめるものが富であり名声であるから、小人にも君子にもなってはいけない。

無名の一市民として自然の道に従って、あらゆる変化に対応できる体勢を保ちなさいという。

四月は叙勲の月です。

勲章を受けられなくても人間の為すべきことを地道に積み重ねている人間は大勢います。

まさに自分の生きがいは何かということを問い直すきっかけを与えてくれる言葉といえます。

この一週間で、トランプの相互関税は90日間停止の措置がとられました。

トランプはUS#1の名声のために命をかけています。

そのための措置がUS本国を苦しめることになるかもしれないと周囲からも助言され、今回の結果になったように思います。

日本経済はトランプにあおられ放しですが、日本の本性は一体何かを問い直してもよい時期かもしれません。

確かに戦後経済はアメリカ一辺倒でしたが、今はアメリカ以外の友好国も多いわけですし、それらの国々とのネットワークを緊密にして経済や安全保障を考えていくべきでしょう。

日本の本性は、資源の少ない島国です。

食糧自給率はカロリーベースで38%、エネルギー自給率は13%です。海が閉鎖されれば、生きていけないことは明らかです。

江戸時代は鎖国しても生きていけましたが、今は食糧が途絶え、エネルギーが途絶え国民は飢え死にします。

台湾有事といいますが、海路が途絶えないようにするために何をすべきかやるべきことは見えてくるように思います。

荘子の言葉からあらぬ方向に話がそれましたが、天から与えられた本性に従った生き方は、国家にも通用すると感じています。

 

有無相生

 

 

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