老子小話 VOL 1270(2025.03.29)

大國者下流。

天下之交、天下之牝。

牝常以靜勝牡。

以靜爲下。

(老子、第六十一章)

 

大国は下流なり。

天下の交、天下の牝(ひん)なり。

牝は常に静を以って牡(ぼ)に勝つ。

静を以って下ることを為せばなり。

 

今回の言葉は、老子よりいただきます。

世界には大国と小国があり、それらの国々が共に助け合いながら平和を維持している。

これが理想ですが、今の世の中を見渡すと、大国が強権を発動して思うように世界を動かしていくように見えます。

古代中国の戦国時代も同じような状況でした。

そんな時代に生きた老子は、大国は下流にいなければいけないと説きました。

「大国は大河の下流である。

世界中の流れが集まる所であり、世界中がなびき従う牝である。

牝は常に静かにじっとしていて牡に勝つ。

静かにへりくだっていることにより勝つのである。」

一言でいうと、大国の大国らしさは強さを表にひけらかすことではなく、内に秘めてへりくだることだという。

老子は、女性のたくましさが大国のとるべき姿だという。

強いアメリカを唱えるトランプとは真逆の姿です。

中国もロシアも台湾やウクライナという小国をいじめているのが現状です。

イスラエルも国土は小さいですが、強権をもって隣国を脅す姿勢はアメリカと変りません。

生物学的に見て、女性の平均寿命は男性よりも長く、体力では男性に劣りますが、生命の強さでは勝ります。

そういう自然界の真理を見つめて、大国がならうべきは牝のように振舞うことだと結論づける。

長い人間の歴史を見ても、大国が長続きした例はありません。

理由は、牡のように力任せに勢力を拡大し、力尽きたとき国は衰退します。

強権はいつまでも続かないことは証明されている。

小国が大国に従うのは、大国を尊敬する気持ちがあるからです。

尊敬に値する大国の態度とは、老子が言うように、小国を大国と同じように扱うという態度です。

小国を見下す態度と真逆の態度です。

ロシアは自国の安全保障のためにウクライナに侵攻しましたが、ウクライナの安全保障は度外視している。

相手を自分と同じだとは見ていない。

こういう姿勢が見え隠れしている国は尊敬が得られるはずはない。

老子の言葉は、今だからこそ心に刺さります。

 

有無相生

 

 

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