老子小話 VOL 1269(2025.03.22)

不易を知らざれば基立がたく、

流行を知らざれば風あらたならず。

(向井去来、「去来抄」)

 

今回の言葉は、去来よりいただきます。

去来は芭蕉の弟子で、芭蕉からの教えをまとめたものです。

不易とは昔から変らないもので、流行とは時代と共に変っていくものです。

「昔から変化しないものを知らなければ基礎は成り立たず、

変化していくものを知らなければ新しいことを創造できない。」

この言葉を取り上げるきっかけになったのは、昨日NHKのサザンオールスターズ番組での桑田佳祐さんの言葉です。

サザンオールスターズといえばJPOP界のレジェンドです。

常に新しい曲を発表して時代の先端を走っていますが、その創造の原点は模倣だという言葉です。

「神様からの贈り物」という曲は、先人は凄いで始まり、模倣の原点をたどります。

模倣といっても、メロディやリズムだけではなく、曲想、曲からイメージされる光景を含みます。

そういったものを含んで新しいものを創造できるのは、変化している内容を取り入れることです。

桑田さんが言いたかったのはそういうことだったと思います。

先人たちが凄かったのは、模倣と創造を同時にやってきたからだったといっているようです。

日本の発展を支えた産業も最初は模倣に始まり、革新すべきポイントに気付き創造を繰り返してきました。

芭蕉も同じことを後輩に託しました。

論語にも温故知新をいう言葉があり、昔のことを学び新しいものを生み出すことを言います。

芭蕉の言葉の方が創造のプロセスとしてはもっと具体的です。

確かに日本の文化は漢字を取り入れて中国の影響が大きかったのは事実です。

しかし、模倣に終わらずに日本の風土に合うように、カナやカタカナを生み出し、わびやさびという独自の文化を創造してきました。

「神様からの贈り物」ではJPOPの100年を歌っていますが、先人の努力は1000年以上前から始まっている。

老荘思想を読み解くにあたっても、不易流行の視点で、新たな発想につなげていくことが大事だと気付かされます。

 

有無相生

 

 

戻る