老子小話 VOL 1265(2025.02.22)

石火光中、爭長競短、何光陰。

蝸牛角上、雌論雄、許大世界。

(菜根譚)

 

石火光中に、長を争い短を競う、幾何の光陰ぞ。

蝸牛角上に、雌を較べ雄を論ず、許大の世界ぞ。

 

今回の言葉は菜根譚よりいただきます。

今の世界の状況を見たときの嘆きの言葉のように思われます。

「人の一生は石火の火花のように一瞬である。

その間にどちらが長いとか短いとか競い合っているが、一体どの位の時間なのか?

住む所も蝸牛の角の上のように狭い。

そこでどちらが勝つか負けるか争っているが、どれほどの大きさの世界なのか?」

短い一生の間にやるべきことは、もっと他にあるでしょうと問いかけます。

石火光中は時間、蝸牛角上は空間を意味し、どちらも非常に限られた範囲を表します。

何に比べてかというと、果てしない宇宙の歴史に比べてということです。

その広大な宇宙の中で小さな星が生まれ、その星の上で人類が生まれたのはつい最近のことです。

その小さな星の上で、どちらが強いか弱いか、どちらが勝つか負けるか、争っている。

古代ローマも、広大なモンゴル帝国も、海を制したスペインもイギリスも、一時は世界を制したように思われた。

しかしやがて衰退し、身の程を知るようになる。

自分が生活し居心地のよい空間の中におさまっていく。

結局、この小さな星で人類が生き残っていくには、限られた資源の中で助け合って生きていくしかない。

大国でありながら更に領土を増やそうとするロシアやアメリカの首脳に聞いてもらいたい言葉です。

大国であればあるほど、衰退する恐怖を抱き、今よりももっと強くするという野心を抱く。

その野心が世界をますます混迷に導く。

力の政治がよいか、和の政治がよいかは、これまで人類がたどった歴史を見るしかありません。

いずれにしても、どの国も他国の協力なしに生きていけないということでしょう。

 

有無相生

 

 

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