◆老子小話 VOL
1264(2025.02.15)
すべての人間が、自由を得るや、その欠点を発揮する。
強い者は度を超え、弱い者は怠ける。
(ゲーテ)
最近、ゲーテの言葉を取り上げた小説が、芥川賞をとられました。
それにちなんで、今回の言葉はゲーテよりいただきます。
この小説にこの言葉が載っているかはわかりませんが、自由を得るとひとはどうなるかを端的に表しています。
自由とは、思い通りに生きてよいということです。
今までこれをしてはだめ、あれをしてはだめと制約の中で暮らしてきたのが、今日からは好きなようにしてよいと言われる。
権力者は何をしてもよいと考え、国際的なルールを無視して、領土を拡大したり、関税を強化したりする。
プーチンやトランプのやっていることがまさにそれです。
ウクライナの頭ごなしに、停戦協議を始めようとする。
まるで、ウクライナが自分の所有物であるかのように扱う。
強い者に意見するものはいないので、ますますつけ上がる。
度を超しても、度を超えていることすらも自覚できない。
究極は身の破滅まで進んでいく。
一方、服従者は制約の中で無理やり働かされていたのが、制約が消えることで怠けることを覚える。
本来の職務を怠けるだけでなく、権力者の目を盗んで賄賂を受け取ったりする。
中国やロシアの汚職は典型例でしょう。
もっと身近では、リモートワークで時間の使い方の自由が与えられると、とかく怠けてしまうのはありえること。
イーロン・マスクがリモートワークを禁止するのも一理あります。
いずれにせよ、強い者も弱い者も、自由になったとき、自分の心の制約までも忘れているのが共通しています。
いくら自由でもそれをやっちゃお仕舞いという、心の制約まで消えている。
いくら権力があっても、他国の自由を奪って侵略することは許されない。
いくら時間を自由に使えても、仕事に集中し成果がでなければいけない。
自由を得ても、それがどういう意味があるかを自問することが必要になります。
どういう範囲の自由なのかを自覚し、その範囲で思い切った行動をとる。
自分自身をコントロールできる人間が一番自由だということをゲーテは教えます。
有無相生