◆老子小話 VOL
1259(2025.01.11)
故兵貴勝、不貴久。
故知兵之將、生民之司命、國家安危之主也。
(孫子、第二十二章)
故に兵は勝つことを貴びて、久しきを貴ばず。
故に兵を知るの将は、民の司命、国家安危の主なり。
今回の言葉は孫子よりいただきます。
「戦争は勝利を第一とするが、長引くのはよくない。
従って、戦争をわきまえた将軍は、人民の生死の運命を握るものであり、
国家の安危を決する主宰者である。」
戦争は勝つことが第一だが、長期化すれば敵も味方も疲弊する。
長期化すれば、戦場の兵隊は戦意を喪失し、戦場からの脱出を試みる。
敵の攻撃を受ける市民は明日に命をつなぐことしか考えられなくなる。
ウクライナを侵略するロシア、パレスチナを荒廃させるイスラエルで、戦争を主導する為政者たちに孫子の言葉を捧げます。
そして大統領となるトランプは、グリーンランドやパナマ運河を力ずくで我が物にしようとする。
戦争を仕掛けようとすれば、プーチンやネタニヤフと変わらない為政者となる。
戦争をわきまえた為政者は、自分の判断が市民の生死を左右し、国家の運命を決することを自覚している。
このときの市民や国家は、自国だけでなく、戦う相手国の市民や国家を含んでいる。
太平洋戦争で、長期戦を避けた米国が広島と長崎に原爆を投下した。
この判断は、当初は自国の利益だけを考えた判断だった。
しかし、放射能の怖ろしさを知り、実際に核兵器を使えば地球が滅ぶことを核保有国は悟った。
ウクライナ戦争では、核抑止力しか頼ることができない核兵器の使用で脅す為政者が現れた。
今の戦争は、戦場で戦っていない市民(非戦闘員)を大量に殺戮するケースが多くなっている。
パレスチナ・ガザ地区ではジェノサイドが堂々と行われている。
戦う相手国の市民や国家に遺恨を残す戦争は、たとえ勝っても勝利とはいえない。
中東戦争はそのいい例である。
戦争をわきまえた将軍は、戦争の終わらせ方にも熟知している。
老子七十九章に曰く、「大怨を和すれば必ず余怨あり。」
大きな遺恨を残して和平を結んでも、火種は決して消えない。
火種を残さない和平を期待したい。
有無相生