老子小話 VOL 1249(2024.11.02配信)

一龍一蛇、與時倶化、而無肯專為。

一上一下、以和為量、浮遊乎萬物之祖、

物物而不物於物。

(荘子、山木篇第二十)

 

一龍一蛇、時とともに化して、あえてひとえに為す無し。

一上一下、和を以って量となし、万物の祖に浮遊して、

物を物とするも、物に物とせられず。

 

今回は、荘子の言葉をお届けします。

ちょっと長いですがご勘弁を。

「あるときは龍となり、あるときは蛇になり、時と共に自在に変化し一つのことに固執しない。

あるときは天に昇り、あるときは地をはって、そのときのままに調和し、

万物の生まれ出る(道の)世界に漂い、物を物としてあらしめながら、自分自身は一個の物に化すことがない。」

このような生き方ができれば、生きるわずらわしさは消えるといいます。

荘子の文章は詩のように語りかけ、映像となり目に浮かびます。

普通、竜虎というように龍と虎がペアですが、荘子の場合は、龍と蛇のペアです。

龍は華々しく天に昇りますが、蛇には足がなく、身体をくねらせて地をはって前進します。

人生は飛翔と呼べるような華々しい場面もありますが、地をはってぐっと我慢する場面も多いかと思います。

そんなとき、蛇になっていると想像すると何とか耐える勇気をもらうような気がします。

蛇は前進できますが、後退はできません。

真っ直ぐに進めなくても、障害を避けながら前進します。

あるときは感動に胸を躍らせ、あるときは四苦八苦しながら地をはって前進する。

その繰り返しが人生そのもののような気がします。

道の世界に漂いながら遊ぶには、その時々の自分を龍や蛇に置き換えてみる、こころのゆとりが必要なようです。

自分を物として見ながら、物に固執することがない。

龍の自分や蛇の自分を想像する、新たな自分を持つゆとりといえるかもしれません。

あれよあれよ言うまに、今年もあと2ヶ月となりました。

何とか無事に一年を終えたいという願いをこめて、荘子の言葉を選びました。

 

有無相生

 

 

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