老子小話 VOL 1246(2024.10.12配信)

兵者不祥之器、非君子之器。
不得已而用之、恬淡爲上。
(老子、第三十一章)

 

兵は不祥の器にして、君子の器にあらず。

已むを得ずしてこれを用うれば、恬淡なるを上となす。

 

ノーベル平和賞に、原爆被爆者による核兵器廃絶運動を続けてこられた日本被団協が受賞されました。

この略名だと何のことやらわかりませんが、日本原水爆被害者団体協議会が正式名称です。

被爆されてから80年近く経ちますが、今頃授与されるとは遅すぎの感があります。

被爆者の平均年齢が88歳なので、被団協自体の存続も危ぶまれる状態です。

しかし、被爆者の声を次世代に伝えていく若者の地道な活動は続いているので、心配ありません。

今回は、受賞を祝し老子の言葉を捧げたいと思います。

「兵器は不吉な道具であり、君子が用いる道具ではない。

止むを得ずして兵器を用いるときは、執着せずにあっさりと用いるのが第一である。」

核兵器となると不吉度がぐっと高まります。

高熱で人間が蒸発してしまうので、後には高熱を受けた人間の影だけが残ります。

あまりの凄さで、核兵器に頼る人間は恐怖の実感がわかないのかもしれません。

実際に広島長崎を訪問して、原爆被害の実態を目にしないと核廃絶の決心が起きないのかもしれません。

核兵器の場合は、威嚇はできても、あっさり用いることが難しい。

一度使えば、核汚染が拡散し、必ずエスカレートしていく。

核でやられたら、核でやりかえす。

結局政治家は、国民を守るために核を使い、核によって国民を滅ぼす。

核は恬淡なるを許さずということでしょうか。

核は人類にとって破滅の道具ということを認識すべきでしょう。

日本被団協の受賞は、No more Hibakushaを掲げる核廃絶運動の応援歌となりました。

 

有無相生

 

 

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