老子小話 VOL 1245(2024.10.05配信)

猶懸牛首于門而賣馬肉於内也。
(晏子春秋、内篇雑下第六)

 

猶お牛首を門に懸けて馬肉を内に売るがごとし。

 

石破首相が誕生し、期待感をもって先週の言葉を選びました。

しかし、総裁選の前に掲げていた言葉が空々しく聞こえるほどに、期待を裏切っている状況が続いています。

十分な論戦を経た後に衆院選挙を行うと言っていたのに、選挙の日を先に決めて論戦は後回しにしてしまった。

裏金議員の原則公認も、国民の納得を得る前に先行している。

「ルールを守る、国民を守る」というスローガンが自民党の論理の前にどこかすっ飛んでしまった感がある。

そこで今回の言葉は、「晏子春秋」から選びました。

羊頭狗肉のもとになった話です。

店先に牛の首をかけて看板代わりにしている店で、馬肉を売っている実態を示しています。

これが満州あたり(今の中国東北地方)にいくと羊肉がご馳走になるので、羊の首を看板にして犬の肉を売る例えに変わります。

石破さんのスローガンも牛の首のようなもので、いつの間にか馬肉に変わってしまいました。

石破さん本人は苦渋の決断と言っていますが、政治家は言ったことよりやったことで評価されます。

どういう経緯でそういう判断をしたのか、説明責任をまず果たしていただきたいですね。

党内の抵抗勢力に押し切られたというのでは、「自民党を変える」という言葉も牛の首になる。

石破さんの論理では、論戦で党外の賛同を取り付けた上で選挙に入るというのが筋だったと思います。

それが旧来の自民党の数の論理に変わり、選挙に勝てば数で議会を押し切り、自分の公約は果たされると考えたわけです。

当選者数を増やすには、裏金議員の原則公認も止むを得ないと考えたのでしょう。

論戦を尽くせば持論のぼろが出てくるので、適当な所で切らないと選挙にも影響すると、抵抗勢力にそそのかれたのでしょう。

いずれにせよ、牛肉で国民を喜ばせておきながら、実際は馬肉を売るようなことはしてほしくありません。

政治というのは一人ではどうしようもない。

掲げたスローガンをすぐ引っ込めるのではなく、スローガンに基づいて抵抗勢力と折り合いをつけていくプロセスが国民に見えるようにすれば、支持率も上がっていくものと思われます。

今回の言葉がでてくる「晏子春秋」の話にちょっと触れます。

王様は、女子に男装させることを面白がり、宮廷の外では男装を禁じつつ、宮廷内では盛んにこれをやった。

これは男装はいけないという看板を出しつつ、裏では男装を楽しむという、言っていることとやっていることが食い違っていると晏子は諫めました。

これを牛の首を掲げ、馬肉を売るというたとえで表現しています。

晏子は2500年前の政治家ですから、世界は発展していると言っても、今も昔も人間そのものは変わっていないことになります。

 

有無相生

 

 

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