◆老子小話 VOL
1243(2024.09.21配信)
道可道、非常道。
名可名、非常名。
無名天地之始、有名萬物之母。
(老子、第一章)
道の道とすべきは、常の道に非ず。
名の名とすべきは、常の名に非ず。
名無きは天地の始め、名有るは万物の母。
今回の言葉はタオの原点、老子第一章からお届けします。
「これが道だとひとに示すことができる道は真実の道ではない。
これが名だとひとに示すことができる名は真実の名ではない。
名がなかったのが天地の始まりであり、
名がついたことで万物は生まれた。」
宇宙創生の道は、物理学の永遠のテーマです。
素粒子の海から宇宙が生まれたことになっていますが、その素粒子はどこから生まれたとなると定かではない。
こうして宇宙は生まれたと道を示しても、その道はいずれ覆される。
道を示すためには、万物に与えられた名を使わなければならない。
そして、万物に与えられた名は仮の名であり、一定不変の名前ではない。
そのため、名を使って示された道も常の道ではない。
第二十五章に、「物有り混成し、天地に先んじて生ず」とあります。
天地が生まれる前に素粒子(気のようなもの)が入り混じった状態があり、それは天地の母と呼べるという。
その名を知らないから、仮に「道」と呼んでいます。
万物がたどった道は生命の道ですが、生命がどのようにして誕生したのかになると答えはまだ出ていない。
最後は人間の道で、どのように生きればよいのか、いろんな人がいろんな道を示しています。
しかし、常の道は見つからない。
名がつけられ言葉で表現されると、真実の姿が固定化され、歪められた道に変わってしまう。
道は言葉で表現しえないもので、自然の流れの中で直観される真理のように思えてきます。
人間を取り巻く自然は、恩恵を及ぼすとともに脅威を与える。
洪水や干ばつは毎年繰り返され、海洋温暖化は漁獲量に大きく影響している。
こうした自然の声を無視していると、気付いたときには手遅れということになりかねない。
世界規模で食糧不足になると、食糧自給率が低い日本は大打撃を受けることになる。
自給の道は、安全保障の道でもあるわけです。
軍備増強だけに目を奪われていると、足元をすくわれます。
第一章を起点にいろいろな道を考えてみました。
有無相生