老子小話 VOL 1239(2024.08.24配信)

遺伝、境遇、偶然、━ 我々の運命を司るものは畢竟この三者である。
自ら喜ぶものは喜んでも善い。
しかし他を云々するのは僭越である。
(芥川龍之介、「侏儒の言葉」)

 

岸田首相が次期総裁選に立候補しないと表明してから、総裁選に出馬する方が乱立しています。

米国では、大統領選挙に向けて、カマラ氏とトランプ氏の論戦が熱気を帯びています。

国の運命を左右する出来事ですが、個人の運命に関するお言葉を芥川氏からいただきました。

芥川龍之介といえば、短編小説のレジェンドですが、「侏儒の言葉」という警句集も書いています。

われわれの運命を支配するのは、遺伝、境遇、偶然の三つだという。

政治家に二世、三世が多いのも、政治家の家に生まれついて、地盤を受け継いで当選するように、境遇が運命を支配する。

親が近眼なら、子供も近眼になる可能性は高くなる。

わたしも、近眼で苦労した場面に多く出会いました。

交通事故や天災では、自分ではどうすることもできない偶然が、自分の運命を決めてしまう。

幸運に恵まれてきたものは、自分の幸運を喜んでもよい。

しかしながら、他人の運にとやかく言うのは出すぎた真似だと芥川氏は言います。

遺伝は、生まれながら背負ったもの。

境遇は、自分が置かれた家庭、経済状態、人間関係、社会的な身分や地位で、一言で言えば、自分の生い立ち。

そこには、自分ではどうすることもできなかった要素が含まれる。

偶然はなおさらで、神のみぞ知ること。

自分の幸運をどう思おうがそのひとの勝手である。

しかし、他人の幸運を恨んだり、不運をほくそ笑むのはお門違いという。

運は運であり、どうすることもできなかった結果である。

その結果に対し、他人が云々してみても何も始まらない。

当の本人が、結果を素直に喜んだり、自分でできたことはなかったのかと反省するのは、本人の自由です。

芥川氏も、自分の運命について、他人から取りざたされたことがたびたびあったのでしょう。

うんざりする気持ちがこの言葉を生んだのかもしれません。

 

有無相生

 

 

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