老子小話 VOL 1238(2024.08.17配信)

あらしがすつかり青空にしてしまつた
(尾崎放哉)

 

台風7号が関東を通過して、また暑い日が戻ってくるようです。

今回の言葉は尾崎放哉の自由律俳句をお届けします。

台風が過ぎ去った今朝の空を表しているようです。

あらしの前の不安や心配がうそのような青空です。

あらしが一切のもやもやを吹き飛ばしたかのように、心も晴れ晴れです。

老子には、「飄風は朝を終えず、驟雨は日を終えず。」(第二十三章)という言葉があります。

強風も土砂降りも長く続かないという意味です。

台風は、空気の渦が動くことで、強い風と雨をもたらします。

台風が過ぎれば、もとの青空がもどります。

あらしにより大空の雲まで吹き飛ばしてくれたことを、放哉は、「すっかり青空にしてしまった」と詠みます。

でもこの句は、放哉のこころの変化も暗に表しているようです。

あらしは人生の一大事。自分のこれまでの生活を一変するようなことです。

いいこともあれば悪いこともある。

すべてひっくるめて、今までの自分を変えてしまう事件です。

そういった大事件が過ぎ去ったあと、それまで抱えていたもやもやがすっかり消えて、新たな生き方が見えてくる。

それを青空と呼ぶことができる。

あたかも大事件があらしだったかのように見え、それが自分のこころをすっきりさせてくれたように思えてくる。

自然の変化の中に、自分のこころの変化を見ることをこの句は教えてくれます。

 

有無相生

 

 

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