◆老子小話 VOL
1230(2024.06.22配信)
学問は尻からぬけるほたる哉
(与謝蕪村)
今回の言葉は、蕪村の句です。
ほたるの季節ももう少しでやってきます。
ほたるの光で勉強したことを歌うのが、「ほたるの光」。
勉強したことを忘れていく様子を、ほたるの光にたとえたところが何とも趣きがあります。
確かに、ほたるの光っているのはお尻のところです。
ほのかに光っているのが学んだ知識だとすると、学んだ知識は知らぬうちに放出されてしまう。
その様子を「尻から抜ける」と表現したところがしゃれています。
蕪村にとっても、学問は身につかないものだったようです。
この句を見て思い浮かべるのが、老子の「絶学無憂」(学を絶てば憂いなし)です。
第二十章冒頭の言葉です。
知識をいつまでも保っていると、それに束縛されて自由な発想ができず、憂いが増してくる。
とはいえ今の世の中では知識はどんどん入ってくるので、それを拒むことはできず、次から次へと忘れていくのがよい。
ほたるのように、尻から放出していけば憂いは消えていく。
ほたるの飛ぶ姿は、静かで穏やかに空間を漂い、そこには憂いはない。
放たれる光は微かでありながら、ほたるの航跡を示してくれる。
尻からぬける光が、自身の生の所在を示してくれる。
無為を貫けば、学んだ知識は自然と忘れていく。
蕪村の句は、自然の景色の中にタオを感じさせる句でもあります。
有無相生