◆老子小話 VOL
1225(2024.05.18配信)
以無為首、以生為背、以死為尻。
(荘子、大宗師篇第六)
無を以って首(こうべ)と為し、
生を以って背と為し、
死を以って尻と為す。
今回の言葉は荘子よりお届けします。
タオの死生観をユーモア交えて語った言葉です。
首も背も尻も、ひとりの人間がその身にそなえるものです。
身体の上から下に向かって時間は流れます。
無の世界から人間は生まれ、有という生の世界を生き、最後は死という無の世界に帰っていく。
背中は一番長いので、生の時間が一番長いわけです。
生を保つには、首(頭)にある口から食物をとり、背中の内側にある消化器官で栄養を吸収して、尻からカスを排出する。
生きるためには、首も背も尻も一体となってその役割を果たさなければならない。
首を無、生を背、死を尻とたとえることで、無も生も死も、ひとが生きている限り、一体となってその役割を果たしていると語ります。
無から生まれたからこそ、生のありがたみを感じる。
無に帰っていくからこそ、生の時間を充実しようとする。
人生が長くなるほど、背中に負うものが増えてくる。
しかし背中に負うものに執着していると、充実した時間が過ごせなくなる。
負うものを無に近づけられれば、どんなに楽に人生を送られることか。
荘子の言葉は、生死と無が渾然一体となった死生観を教えます。
有無相生