老子小話 VOL 1222(2024.04.27配信)

人之生也柔弱、其死也堅強。
萬物草木之生也柔脆、其死也枯槁。
故堅強者死之徒、柔弱者生之徒。
(老子、第七十六章) 

 

人の生まるるや柔弱、その死するや堅強なり。

万物草木の生まるるや柔脆、その死するや枯槁なり。

故に堅強なる者は死の徒にして、柔弱なる者は生の徒なり。

 

心筋梗塞になって、いろいろなことを学ばせていただきました。

まず深夜にカテーテル手術をしていただいた医師および看護師の方々の献身的な努力、

そしてICUで昼夜を問わず術後経過を見守っていただいた方々のサポート、

家族や知人の思い、自身の身体の回復プロセスなどなど。

それらのすべてが今の自分を生かしてくれているという実感があります。

今回の言葉は、老子の生の根本を語る言葉です。

「人が生まれたときは柔らかく弱弱しいが、死ぬときは堅くこわばってしまう。

万物も草木も生まれるときは柔らかくもろいが、死ぬときは干からびてしまう。

だから、堅くこわばるものは死の仲間であり、柔らかく弱弱しいものは生の仲間である。」

医師から心臓の血管が詰まっているレントゲン写真を見せられたとき、死に直面していたことを実感しました。

心臓の筋肉に血が回らなければ、筋肉細胞は壊死し心臓は止まります。

緊急で詰まりを除くのが、カテーテル手術です。

この手術が遅れると壊死が進み、命取りになります。

すんでのところで、助かりました。

血管も生まれたときは柔らかく弱弱しいが、死ぬときは堅くこわばってしまう。

血管が堅くこわばってしまうことを動脈硬化という。

動脈硬化が進むと血管壁の厚みが増し血管が細くなり、最後は血栓ができ血流を止めてしまう。

従って、血管が堅くこわばってしまうことが死の予兆といえます。

「堅強なる者は死の徒にして、柔弱なる者は生の徒なり。」というのは、血管についても言えそうです。

血管をこわばらせるのが、粥腫(じゅくしゅ)と呼ばれる血管壁にできるこぶで、血液中に存在する悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が沈着したものです。

悪玉コレステロールが基準値を超えているのを過去20年の健康診断で指摘され、それを放置していたつけが回ってきたようです。

人間死に目に会わないと、考えはなかなか変わらないようです。

老子の言葉が今回ほど身にしみて感じたのはこれまでありませんでした。

読者の皆様に置かれましても、自身の健康にくれぐれも留意されますよう、よろしくお願いいたします。

 

有無相生

 

 

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