老子小話 VOL 1221(2024.04.06配信)

両人対酌山花開
一杯一杯復一杯
我酔欲眠卿且去
明朝有意抱琴来
(李白、「山中対酌」) 

 

両人対酌して山花開く

一杯一杯復た一杯

我酔いて眠らんと欲す 卿(きみ)且(しばら)く去れ

明朝意有らば琴を抱いて来たれ

 

花見の季節となりました。

公園で花見もいいですが、山の中で満開の山桜を眺めながら、友と一杯やるのも味があります。

李白も、こころ許した友人と山中で酒を酌み交わしながら花見を楽しんでいます。

今回の言葉は、「山中対酌」という詩をお届けします。

皆様も、李白とともに花見をお楽しみください。

両人とは李白とその友人で、山にこもっているので二人とも仙人気分です。

一杯また一杯と酒が進むにしたがって李白は眠くなる。

自分は眠たくなったので、友人にもう帰れという。

そんなわがままが通る、友人と自分の気ままな関係がみえる所がいいです。

気を許しあうのが、酒飲みの本領です。

そして更に勝手なことをいう。

「明日の朝、よかったら琴(きん)を持ってきてくれ」

という。琴は携帯できる小型の琴のようです。

山道を抱えて運ぶので、小型で軽くないと持って来れません。

終始命令口調ですが、相手に許してもらえるからそういえるわけです。

開と杯と来で韻を踏み、流れるように光景が展開します。

「一杯一杯また一杯」によって、時間を追って酔っていく様子が浮かびます。

山中は静寂であり、聞こえるのは二人の声だけ。

明日は音楽を奏して、宴を楽しもうという呼びかけで、詩を閉める。

これにより、山里に暮らす互いの孤独を紛らわそうという思いも見えてくる。

花見は大勢でわいわいやりながら楽しむのが一般的ですが、肝心の花を見ずに終わることもある。

山中の花見は、静寂と時間の流れのなかで、心許した人とともに花の移ろいを楽しむ。

李白の詩は、そんな光景を見せてくれました。

 

有無相生

 

 

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