老子小話 VOL 1219(2024.03.23配信)

春雨や暮なんとしてけふも有
(与謝蕪村) 

 

今日は朝から肌寒くどんより曇って雨が降りそうな天気です。

この季節に降る雨は春雨といい、蕪村も一日中降られたようです。

今回は、蕪村の句をお届けします。

今日一日の自分の生活を予言するような句です。

句を詠んだのは、今日も暮れようとする夕方です。

春雨に降られて過ごした今日一日を思い返しても、特に何をしたということもない。

でも今日という日を無事に過ごせたという満足感はある。

「けふも有」という表現が素敵です。

何か特別なことが起きたわけでもないが、普段どおりの生活が無事に行えた今日に感謝する気持ちが溢れている。

「今日もあり」と言葉にすることで、今日の無事を確認しています。

春雨に降られなかったら、どこかに出かけられたかもしれない。

そこで新たな出会いがあったかもしれない。

家の中から春雨に濡れる外の景色を眺めるだけでも、新たな発見がある。

春雨が降り続くことでできた水溜りに春雨の雨粒が落ちて、水の球がつながって数珠のように見える。

そんな光景を別の句に詠んでいます。

「春雨や数珠落したるにはたずみ」

自然のなかには、さまざまな美しさが隠れています。

それを見つけられただけで、一日が充足してくる。

足るを知るの、もうひとつの姿です。

 

有無相生

 

 

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