◆老子小話 VOL
1216(2024.03.02配信)
悪忌陰、善忌陽。
故悪之顕者禍浅、而陰者禍深。
善之顕者功小、而陰者功大。
(菜根譚)
悪は陰を忌み、善は陽を忌む。
故に、悪の顕われたる者は、禍浅くして、隠れたる者は、禍深し。
善の顕われたる者は、功小にして、隠たる者は功大なり。
今回の言葉は、菜根譚よりいただきました。
「悪事は人目につかないことを嫌い、善行は人目につくことを嫌う。
だから、人目につく悪事は根が浅いが、隠れた悪事は根が深い。
人目につく善行の功績は小さいが、隠れた善行の功績は大きい。」
道を散歩していて、黙々と道路のゴミを拾ってビニール袋に詰め込んでいる人を見かける。
誰に頼まれたわけでもなく、街をきれいにしようと自発的に動いておられる。
電車に乗っていて、荷物を持ったお年寄りが乗ってきたとき、おのずと身体が動いて席を譲る人を見かける。
隠れたる善行とは、人目に付く付かないに関わらず、自然に身体が動く善行のように思います。
反対に悪事のほうは、人目につく悪事はまだ対策を打てるが、人目につかない悪事は延々と暴かれるまで続けられる。
だからこの悪事は根が深いと菜根譚は語ります。
今回の自民党の裏金問題は、根が深い悪事になりました。
政治資金パーティで集めた金を収支報告書に記載せず裏金化し、それを何に使ったのかもわからないというお粗末振りです。
それを自民党の派閥が主導してやっていたのは明らかですが、政治倫理審査会で問われても自分は関与していないとしらを切る。
いわゆる責任の所在が自分でもわからないという。
この隠れた悪事が明らかになったのは、検察でも自民党からの内部告発でもなく、神戸学院大学の一教授の刑事告発だったというのが驚きです。
まさに、国民が何もしなければ、自民党はこの悪事を続けていたことになる。
なぜそうなったのか?
自民党が長期にわたり政治の主導権を握り、自分たちに都合のよいように政治資金集めを継続してきたからに他ならない。
そういう体制を国民も許してきたという事実も付け加えられます。
確かに菜根譚のいうように、悪事は人目につかないことを嫌うので、いずれ公に暴かれる。
しかし、公に暴かれた後の自民党幹部の態度が、自らの悪事をさらに隠そうとする、悪事の上塗りです。
裏金作りしたことは事実でも、誰に責任があったのかは結局闇に葬ろうとする。
国民の政治への無関心が続けば、この先このような悪事はまた別の場所で隠されるでしょう。
一方、善行のほうは、人目など気にせず、何気に行うのがよいと思います。
善は日なたを嫌うからといって人目につかないことを気にしていたら、タイミングを逸します。
有無相生