老子小話 VOL 1209(2024.01.13配信)

夫兵形象水。
水之形、避高而趨下。
兵之形、避実而撃虚。
水因地而制流、兵因敵而制勝。
故兵無常勢、水無常形。
(孫子、虚実篇第六) 
 
それ兵の形は水に象(かたど)る。
水の形は高きを避けて下きに趨く。
兵の形は実を避けて虚を撃つ。
水は地に因りて流れを制し、兵は敵に因りて勝ちを制す。
故に兵に常勢なく、水に常形なし。

 

今回の言葉は、孫子よりいただきました。

水のごとく戦えば勝ちを制することができる。

戦う相手は、戦争で争う敵ではなく、人生で遭遇する諸問題に置き換えることができます。

老子同様、水は生きる糧でもあり、生きるためのヒントでもあると孫子は説く。

「軍の態勢は水の形のようなものである。

水の流れは高いところを避け、低いところに向かう。

軍の態勢も、敵が備える実を避け、すきのある虚を攻撃する。

水は地形に従って流れを決め、軍は敵の情勢に従って勝利を決める。

だから、軍には決まった勢いはなく、水には決まった形がない。」

水の動き方を学べば、戦い方も相手の状況に合わせて、弱いところを衝くのがベターとなる。

どんな問題でも、手の付けどころはある。

そこを丹念に押さえていけば、やがて問題を解く鍵は得られる。

そんなことを孫子は教えているようである。

ポイントは、「兵に常勢なく、水に常形なし。」です。

ワンパターンで事にあたっていては、何事も解決しない。

状況をしっかり見て、何が問題なのか見極めるのが出発点です。

地形をしっかり観察して、どこが高く(難所)で、どこが低い(難所でなさそう)かを判断する。

低いところをまずは押さえていけば、次第に高いところに行き着く。

エベレストの山に登るのも、一気に登るのではなく、低いところにベースキャンプを張り、身体を慣らしながら頂上を目指します。

問題の解決も、とりあえずできる所から始めてみる。

当たり前のようでいて、結構難しいことです。

人間はどうしてもルーチンで事にあたるようにできています。

孫子の言葉は、敵の情勢は常に変化するので、勝つためにはルーチンをまず捨てなければいけないと教えているようです。

 

有無相生

 

 

戻る