老子小話 VOL 1207(2023.12.30配信)

致虚極、守静篤。
萬物並作、吾以観復。
(老子、第十六章) 
 
虚を致すこと極まり、静を守ること篤し。
万物は並び作(お)こるも、吾れは以って復(かえ)るを観る。

 

今年は公私ともどもいろいろありましたが、最後は老子の言葉でしめます。

老子の世界観を代表する言葉です。

「心を空っぽにして、深い静けさを堅く守っている。

そうすると、万物は盛んに生長しているが最後はもとに戻っていくのが

自分にはみえる。」

身の回りの木々を見ていても、夏は葉が生い茂り、暑い日ざしを避ける陰を作ってくれます。

冬になれば葉を落とし、弱まった日ざしを少しでも受けられるように光を与えてくれます。

季節とともに自身が変化して、周りの生き物に恩恵を及ぼしている。

どんな生物にも寿命があり、寿命を終えれば土に還って草木の栄養になる。

「復る」には深い意味があります。

決して同じことの繰り返しではないのですが、働きとしては同じことを繰り返しています。

こうした自然の働きは、自分中心の見方では見えてこない。

それに気付くには、虚を致し、静を守ることが必要になってくる。

自分が木々となって一年の景色の変化を眺めてみる。

鳥が枝に巣を作りひなを育て、アリが樹液を求めて幹をよじ登ってくる。

生き物皆が互いに助け合って、互いの命を支えている。

そんな姿に気付くには、私を捨てるしかない。

今年は、ウクライナでの戦争に加え、パレスチナでも戦争が始まりました。

人間だけが、自分中心の見方を捨て去ることができない。

自分だけが神に救われるという選民の考えを持つ限り、共存によって世界が成り立つという方向には行かない。

どちらかがどちらかを支配して安定を保つという、自然の働きに反した流れになる。

ロシアのプーチンもイスラエルのネタニヤフも、自分中心の国民が生みだしたもの。

悲しいかな、老子を生みだした中国でさえ、威圧的海洋進出にやっきになっている。

今年も老子の言葉が空しく響く年になってしまいましたが、来年こそは共存の道に一歩前進することを願います。

では、よいお年をお迎えください。

 

有無相生

 

 

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