老子小話 VOL 1206(2023.12.23配信)

天地有大美而不言 
四時有明法而不議
萬物有成理而不説
荘子、知北遊篇第二十二) 
 
天地は大美あるも言わず。
四時は明法あるも議せず。
萬物は成理あるも説かず。

 

今回も、荘子より天地自然の言葉をお届けします。

素粒子論でノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹先生のこの言葉の書が阪大にあるそうです。

湯川先生は荘子を愛読されていました。

荘子の自然に対するイメージが、物質を構成する粒子の究極の姿に重なったのでしょうか。

「天地自然は大きなすぐれた(生成の)働きをとげながら、そのことをことばでは言わない。

四季の運行ははっきりした法則を持ちながら、それを議論したりはしない。

万物はそれぞれの道理をそなえながら、それを説きあかすことはしない。」

天地自然は、星を生み出し、太陽を生み出し、地球を生み出し、生命を生み出し、人類を生み出した。

しかし、その長い歴史を天地自然は語らない。

地球が太陽の周りを公転し四季が生まれ、自転することで昼夜が生まれる。

そのおかげで地上に住むすべての生き物が活動と休息の機会を得ることができる。

このように自然の運行の法則は粛々として維持される。

万物は、それを成り立たせる粒子とその間に働く相互作用により形と性質が決まる。

しかし、その原理は謎に包まれたままである。

科学者は、天地自然の謎を解き明かそうと挑戦を挑むが、謎は次々と生まれてくる。

宇宙の始まりや生命の起源すらつかめていない。

人類は、自然の仕組みを解明することで、自然には無かったものを作り出して、今の文明を築き上げてきた。

しかし他方では、自然から学んだことを悪用して、恐ろしい兵器を作ったのも事実です。

細菌兵器や核兵器は、一度感染や放射能汚染が広がると地球規模で生命の危機を引き起こす可能性がある。

兵器のみならず、CO2排出という人類が招いた要因が絡んだ地球温暖化も、いずれ生命の危機を引き起こすかもしれない。

天地自然の道理に逆らうことをしでかすと、自らの存亡に影響を及ぼす問題が起こってくる。

それが今の状況かもしれません。

人間は物事の一面だけで用無用を考えがちですが、天地自然の道理は語りつくせぬほど、いろいろな面が相互に絡み合っています。

その模様を荘子は語っているようです。

ニトログリセリンが、爆薬の原料になると同時に狭心症の薬になるようなものです。

ニトログリセリンから出てくる一酸化窒素が血管拡張効果があることを教えてくれたのは、人間の身体でした。

天地自然の声は、至るところで微かな声で語られます。

耳をすましてお聞きください。

 

有無相生

 

 

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