◆老子小話 VOL
1205(2023.12.16配信)
方其夢也,不知其夢也。
夢之中又占其夢焉、覚而後知其夢也。
且有大覚而後知此其大夢也
(荘子、斉物論篇第二)
其の夢みるに方(あた)りては、其の夢なるを知らざるなり。
夢の中に又其の夢を占い、覚めてしかる後に其の夢なるを知る。
且つ大覚有りて、しかる後に此れ其の大夢なるを知るなり。
今回は、荘子より夢の言葉をお届けします。
「夢見ている最中は、夢が夢であることに気付かない。
夢の中で夢占いをし、目覚めて始めて夢であったことを知る。
人生も同じで、大いなる覚醒があって始めて、人生が大いなる夢であったことを悟る。」
京都に大覚寺というお寺がありますが、ひょっとすると荘子の言葉から採っているかもしれません。
人生が夢のようだと感じる機会は時々訪れるように思います。
こどもの頃に思い描いていた夢の一部は実現し、空しい夢に終わった部分もあります。
夢をもって目標に向かって進むことは悪いことではありません。
夢がかなった理由、夢が破れた理由を思い返し、次の夢のための反省材料にする。
しかし、夢の中にとどまり続けると、それが現実だと錯覚するおそれがでてきます。
豊臣秀吉の朝鮮出兵などはその一例です。
全国統一を成し遂げたあと、明征服のため、朝鮮を落とそうとしました。
最初は平壌まで進撃しましたが、形勢は悪化し、秀吉の死後撤退を余儀なくされました。
結局秀吉は、死ぬまで夢を見続けたわけです。
そんな大それた夢でなくても、どんな夢でも、覚醒している自分を保つことが大事になります。
覚醒するチャンスは何度か訪れる。
状況が変わったり、周囲から意見が述べられたり、何かがおかしいと自分で気付く場合もある。
そんなとき、夢から一度覚めて、夢を再点検するのがよいと、荘子は教えてくれます。
大きな夢であればあるほど、大きな夢を追う自分を見る、覚めた目を持つもう一人の自分をもつことが大事になる。
大覚は、踏みとどまる勇気を与えてくれる。
夢をコントロールしてくれる力となる。
有無相生