老子小話 VOL 1202(2023.11.25配信)

床前看月光
疑是地上霜
挙頭望山月
低頭思故郷
 (李白、「静夜詩」) 
 
床前月光を看る
疑うらくは是れ地上の霜かと
首を挙げて山月を望み
首を低(た)れて故郷を思う

 

今回は、李白の詩をお届けします。

漢文の授業の時に出会った五言絶句ではないでしょうか。

李白が31歳の時、故郷を思って書いた詩と言われています。

床前とはベッドの前で、そこに月の光が射し込んでいた。

まるで地上に降りた霜のようだと思った。

頭を上げて、山の上の月を望み、

そして、頭を垂れて故郷を思う。

シンプルな詩ですが、同じような心境になったことがありませんか。

私の場合は、ベッドの前ではありません。

たまたまドアを開けて外に出ると、こうこうと月の光が射していました。

屋根や車のボンネットに白く反射して、霜が降りたような光景でした。

そしてこの月を以前どこかで見たような気がしてきました。

故郷は浮かんできませんでしたが、過ぎ去った人々との思い出が浮かびました。

月とか星とか雲とか、空に見えるものは、昔の自分を思い出させるもののように思います。

幼い時見た月、恋に悩む青春の時に見た月、涙に浮かんだ月など、今の月に重なって見える。

李白は、故郷の四川省(蜀)を25歳ころ離れ、十数年放浪の旅に出たようです。

そんな中、旅の途中の宿で、故郷の月を思い出したようです。

山月というのは、山に囲まれた故郷で見た月を心に思い浮かべたのかも知れません。

人には誰でも、ふるさとがあります。

ふるさとには思い出が詰まっています。

月を見て、思い出の一片に触れる機会を得るのも素敵なことではないでしょうか。

 

有無相生

 

 

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