◆老子小話 VOL
1198(2023.10.28配信)
罪莫大於可欲、禍莫大於不知足、咎莫惨於欲得。
故知足之足、常足矣。
(老子、第四十六章)
罪は欲すべきより大なるは莫く、
禍いは足るを知らざるより大なるは莫く、
咎は得るを欲するより惨(いたま)しきは莫し。
故に足るを知るの足るは、常に足る。
今回も老子の言葉をお届けします。
今まさにガザ侵攻を続けるイスラエルに捧げるにふさわしい言葉です。
ハマスの反撃は、パレスチナ国土の侵食を続けるイスラエルへの警告とみることもできます。
「最大の罪は欲望をたくましくすることであり、
最大のわざわいは、満足を知らないことである。
最もいたましい過ちは、物をむさぼりつづけることである。
だから、満足を知る満足こそ、永遠に変わらない真の満足である。」
飽くなき欲望は災いを招く。
領土拡大のプーチンの欲望は、ウクライナ侵攻を招いた。
入植による領土拡大のイスラエルの欲望は、ハマスのテロを招いた。
さらに、ハマスを抹殺しようとするネタニヤフの欲望は、ガザの民の多大な犠牲を招いた。
どの災いのおおもとも満足を知らないことから起こっている。
少しでも多くの領土拡大をしようとするイスラエルの欲望が、ガザという監獄を生み出した。
パレスチナ問題は、パレスチナを統治していたイギリスがアラブ民族のパレスチナ人の了解なしに国連にパレスチナ分割を丸投げしたことから始まった。
議決された分割案は、パレスチナ人人口の1/3のユダヤ人に、国土の56.5%を与える不公平なものだった。
さらにパレスチナ国家は、ヨルダン川西岸地区とガザ地区に分断され、地区間移動に際しイスラエルの検問を受けるという不便さを強要された。
近隣のアラブ諸国はこの分割に承服できずイスラエルに対し戦争を起こしたのが中東戦争で、イスラエルの大勝利に終わった。
今回問題となっているガザ地区は、パレスチナ分割の際、パレスチナ人に与えられた土地で、国際空港も建設されたが、イスラエルにより破壊された。
中東戦争やイスラエルの入植により土地を追われた難民がガザに集まり、イスラエルに対する不満の温床となった。
ハマスはイスラエルに対し武力で対抗し、ガザ地区民の共感を買い、選挙で統治を承認されている。
しかし、ハマスのテロ行為への報復のため、イスラエルはガザ空爆を行い、食料、ガス、電気、燃料、水の供給を断ち、ガザ地区民の人権を無視している。
イスラエルの国防大臣が、パレスチナ人をヒューマン・アニマルと呼んだことも、最近話題となっています。
かつてナチスがユダヤ人を呼んだ言葉が、ユダヤ人の口から出たのは悲しい限りです。
国連関連の機関や国境なき医師団が、戦火の中、ガザの人民の人権を守るため、命を捧げているのはありがたいことです。
日本のメディアも、欧米からの間接情報を伝えるのではなく、直接ガザの内側の状況をレポートしないとだめですね。
そこで老子の言葉に還ります。
ガザの民が求めているのは、人間として生きるための最低限の糧と、身の安全です。
日本人なら当たり前のことが当たり前に得られていることが幸せだとまず認識すること、それが老子の言う、足るを知るということです。
さらに地球上のすべての民が、この権利を得るように努めるのが、国家の役割だと思います。
自国民さえ平和に暮らせればよいと考えるのは、本当の国家ではないと考えます。
宇宙から狭い地球を臨んでいるタオは、なんでパレスチナという狭い場所で、蝸牛角上の争いを続けているのかと笑っていることでしょう。
足るを知らずにせめぎあっていると、ともに自滅するというのは歴史が教えている所です。
有無相生