老子小話 VOL 1197(2023.10.21配信)

善者果而已。不以取強。
果而勿矜、果而勿伐、果而勿驕、果而不得已。
是謂果而勿強。
 (老子、第三十章) 

 

善くする者は果ちて已む。以って強いるを取らず。

果ちて矜ることなく、果ちて伐ることなく、

果ちて驕ることなく、果ちて已むを得ずとす。

これを果ちて強いるなしと謂う。

 

イスラエルのガザ侵攻が目前に迫りました。

戦争に関しては、老子も幾つか言葉を残しています。

今回は第30章より、強者の心得をお届けします。

「道にならう者は、勝利をおさめたらそれで終わりにする。

相手をおどすようなことはしない。

勝っても、尊大にならず、勝っても、自慢したりせず、

勝っても、傲慢にならず、やむをえなかったとする。

これを、勝利しても無理なおどしをかけないという。」

果は、結果の果であり果たすの意味もありますが、ここでは金谷先生に従って、勝つと解釈します。

戦争において、強者はたとえ勝っても、自分の強さを自慢し相手をおどしてはならないという。

なぜでしょうか?

上の言葉のあとに、「物は壮(さかん)なればすなわち老ゆ。」が続く。

ものごとは勢いがさかんなほど、無理なことをして老衰へ落ち込む。

強さというのはいつまでも続かないという、自然の原理があるからです。

あの太陽ですら、燃え尽きて消滅する運命にある。

力を誇れば誇るほど、力が衰えたときには、誰も相手にしなくなる。

人間の知恵はこうして言葉になって残っていますが、それを実践することがなかなかできない。

将棋で八冠をとった藤井聡太八段は、大勝負に勝っても、ほこらず自省し、老子の言葉を実践されている。

今回のイスラエルには、この言葉を贈りたいと思います。

なぜこういう事態に陥ったのか、自省していただき、パレスチナ国民の信頼を築くことに注力して欲しい限りです。

 

有無相生

 

 

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