老子小話 VOL 1195(2023.10.07配信)

其雄、守其雌、為天下谿。
為天下谿、常徳不離、復帰於嬰児。
(老子、第二十八章) 

 

その雄を知りて、その雌を守れば、天下の谿(けい)と為る。

天下の谿と為れば、常の徳は離れず、嬰児に復帰す。

 

10月になり、長かった暑さからも解放される気候となりました。

実りの秋を満喫する月です。

今回は、久しぶりに老子からお届けです。

谿は、谷間のことです。

老子は、お山のてっ辺より目立たない谷間を好みます。

なぜなら、命のもとになる水がそこに集まるからです。

「男性的な力強さを知りながら、女性的なしなやかさを守っていれば、世界の万物が集まる谷間となる。

世界の谷間となれば、不変の徳は身から離れず、純真な赤ん坊の状態に戻れる。」

ブルース・リーがBe waterと言ったように、老子も水に最高善を置きます。

水は、どんなものをも押し流し砕く力強さを具える反面、どんな器にもあわせて姿を変えるしなやかさも具えている。

水は、低いところに集まり、目立たないところで生き物の命を支えている。

赤子は羊水の中につかり、水のクッションに守られながら、命を保っている。

水の徳こそが、世界を平和にし、生きる幸せをもたらしてくれると老子は語る。

戦争を始めるときは、男性的な力強さでできるだけ短期間で相手を屈服しようとする。

それが長期化してくると、次第に疲弊してきて力による押さえつけに無力さを感じてくる。

女性的なしなやかさで、相手の器にあわせた収拾策を打ち出すようになる。

結局、力では相手の心のうちを変えることはできないというのが歴史の示すところです。

世界の国が老子の言葉を理解くれたなら、力の政治が減り、もう少し住みやすい世界になっているだろうと今更ながら感じます。

 

有無相生

 

 

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