老子小話 VOL 1191 (2023.09.09配信)

天下皆知美之爲美、斯惡已。
皆知善之爲善、斯不善已。
故有無相生、難易相成、
長短相形、高下相傾、
音聲相和、前後相隨。
(老子、第二章) 

 

天下みな美の美たるを知るも、これ悪のみ。

みな善の善たるを知るも、これ不善のみ。

(まこと)に有と無相(あい)生じ、難と易相成り、

長と短相形(あらわ)れ、高と下相傾き、

音と声相和し、前と後相随(したが)う。

 

今回は、ひさかたぶりの老子をお届けします。

わたしのハンドルネームの由来となる言葉です。

少々長いですが、ご勘弁ください。

「世の人は皆美しいものを美しいとするが、実は醜いものでもある。

善いことは善いとするが、実は善くないことでもある。

有るがあるから無いが生じ、無いがあるから有るが生じる。

難しさと易しさも同じ。長いと短いも同じ。

高いと低いも互いがあるから傾斜する。

楽器の音色とひとの声も互いがあるから調和する。

前と後ろも相手によって順序づけられる。」

世の中のものごとはすべて相対的で依存しあった関係にある。

世の中の価値観はすべて相対的であるから、それに振り回されるのはやめよう。

何が幸せか、時間が過ぎればころころと変わっていく。

「淮南子」に「人間万事塞翁が馬」という言葉があります。

人間というのは、じんかんと読み、世の中のことをいいます。

老人が飼っていた馬が逃げて、周りのひとが慰めていると、その馬がりっぱな馬を連れて帰ってきた。

すると今度は老人の息子が馬から落ちて足を骨折してしまった。

周りのひとが慰めていると、息子は戦争に行かずに助かった。

世の中の価値観はすべて、この老人(塞翁)の馬のように、つぎつぎと変わっていく。

富が増えればよいことかというと、富にたかる者が集まり、彼らから富を守るのに気が気ではなくなる。

易しい問題ばかり解いていて幸せかというとそうでもない。

たまに難しい問題に出会って四苦八苦するのも、充実感のもとになる。

実力が上がるにつれて難しい問題が易しく、易しく見えていた問題が実は難しいことに気づいたりする。

老子の見つめる価値は、陰陽太極図に表されるように、両極の転換を繰り返して保たれるバランスにある。

ちょうど福岡伸一氏が唱える動的平衡がそれを言いえているように思えます。

 

有無相生

 

 

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