◆老子小話 VOL
1189 (2023.08.26配信)
子曰、吾十有五而志于學。
三十而立。四十而不惑。
五十而知天命。六十而耳順。
七十而從心所欲、不踰矩。
(論語、為政第二)
子曰わく、吾十有五にして学に志す。
三十にして立つ。四十にして惑わず。
五十にして天命を知る。六十にして耳順がう。
七十にして心の欲する所に従いて、矩を踰えず。
今回は、有名な論語の言葉をお届けします。
しかし、この言葉の意味をかみ締められるのは、70歳を超えてからでしょう。
それぞれの歳で達成すべきレベルをうまく表していると思います。
「15歳で自分は学問を志した。30歳で独立した立場をもち、40歳であれこれ迷わないようになった。
50歳で天命をわきまえ、60歳でひとの言葉をすなおに聴けるようになった。
そして70歳で思うままにふるまっていても、道を外さないようになった。」
実際にそのレベルに達しているかは別にして、目標にはなると思います。
15歳で義務教育を終了し、自分の将来を考えつつ学問をはじめます。
学問を終えて社会に出ても、はじめは理想と現実のギャップの中で四苦八苦します。
何とかこう生きていけばよいとわかるのが30歳前後で、40歳で社会をリードする立場になる。
50歳になると人生の先が見えてきて、60歳で周囲の言葉に耳を貸すようになる。
以前は60歳定年だったので、再雇用後は周りの声の重みがぐっと増す。
70歳になると悠々自適になるが、周囲に迷惑をかけないように心がけるようになる。
孔子が生きた時代も今の時代も、目標とする人間の生き方はさほど変わっていません。
ただ今の時代は、コロナ、戦争、子育て、物価高などのストレスが多く、40歳でも戸惑っている方も多くいると思います。
また70歳を超えても、思うままにふるまって迷惑をかけ続ける方がいるのも事実です。
ロシアのプーチンも、70歳になってもウクライナに戦争を仕掛け、世界に迷惑をかけ続けています。
いま話題になっているカスハラも、高収入の中高年男性が多いそうです。
高収入で自分が偉くなったような気持ちになっているのでしょう。
身の程を知らず、周囲の言葉に耳を貸さない人間のままでいたのでは、人生から何を学んできたのかと聞いてみたくなります。
老荘の考えでは、年齢にかかわらず、心の欲する所に従っても道を外さないことを目指します。
心を無にすることでそれが可能になる。
プーチンのように、ウクライナを領土にしたいという欲望を捨てること。
カスハラ男性のように、何が何でも望むサービスを受けたいという欲望を捨てること。
老荘の道は、ひととの争いを避ける道です。
今回の言葉は、人生経験が人間を次第にレベルアップしていくはずだという孔子の思いを述べています。
一方老荘は、心を無にすることで、人間は瞬時にレベルアップするはずだといっているようです。
有無相生