◆老子小話 VOL
1188 (2023.08.19配信)
Man wants to live, but it is useless
to hope that this desire will dictate all his actions.
(Albert Camus)
人間は生きたいと願っているが、
この生の願望が彼のすべての行動を決定する
と期待するのは無駄である。
今回は、フランスの作家カミュの言葉をお届けします。
人間の行動を決定するのは、生存願望だけではないという言葉です。
冒険家や探検家は、死の危険を冒して、偉業を成し遂げます。
カミュの小説「異邦人」では、主人公ムルソーは殺人を太陽のせいにします。
カミュは人間の行動はabsurdeにより引き起こされると考える。
absurdeは、ばかげたこと、筋道の通らないことで、小難しくいうと不条理となる。
人生に意味はなく、そこに意味を見出そうとすると、幸福にはなれない。
意味がないなら生きる価値はないかというとそうではなく、意味がないからこそ生きる価値があるとしました。
ブッダの教えにおいても、人生は苦の連続とされ、その苦を乗り越えるために覚りをひらく。
一切を空と考え、一瞬間、苦から解放される。
大災害の真っ只中で他者の命を救うために救護活動に励み、不幸にして命を落とすひとがいる。
9.11しかり、3.11しかりです。
生存願望と比較して、そこに意味を見出そうとしても無駄なこと。
彼は、生存願望を秤にかけて動いたのではなく、absurdeに突き動かされて行動したまでのことです。
カミュは、人生をシーシュポスの生き方にたとえました。
シーシュポスは力の限りを尽くして、岩を山の頂に運びます。
山頂に運び上げたと思ったら、岩はたちまち下界に転がり落ちる。
そこでシーシュポスは、この無意味な運び上げを毎日毎日繰り返す。
不条理な運命を自らの選択で受け入れていることが彼に充足感をもたらす。
ブッダの覚りが、シーシュポスの充足感にかぶっているような気がしてきました。
有無相生