老子小話 VOL 1181 (2023.07.01配信)

世の中は行為によって成り立ち、
人々は行為によって成り立つ。
生きとし生ける者は業(行為)によって束縛されている。
---進みゆく車が轄(くさび)に結ばれているように。
(スッタニパータ) 

 

ようやく梅雨らしい天気になってきました。

蒸し蒸しした心をブッダのことばで爽やかにしたいと思います。

「スッタニパータ」はブッダの言葉をお弟子さんがまとめたものです。

世の中には、りっぱな言葉を語る人はたくさんいます。

しかし、世の中を成り立たせるのは、言葉ではなく、その人の行為です。

ブッダが生まれたインドにはカーストという身分制度があり、生まれながら自分の身分が決まっていた。

ブッダは、この身分制を否定し、身分を決めるのはそのひとの行いだと主張した。

今回の言葉は、その主張を述べたものです。

ブッダの教えが今なお生きつづけているのも、その言葉ではなく、彼の行動によっているわけです。

世の中には、言っていることとやっていることが違っている人の方が多いのは明らかです。

言行一致の人は、言葉で語るより先に行動で語っているので、言葉は不要です。

むしろ言葉が多い人ほど、行動が伴っていないと見るほうがよいかもしれません。

ブッダは、生きている者は、その生存自体が行為に束縛されていると考える。

轄(くさび)というのは、車輪と車軸を結びつけるくさび(ピン)だそうです。

このくさびがないと車輪が空回りして、前進することことができません。

言葉が空回りして、物事が進展しないのと同じです。

政治家や評論家の議論のようなもの。

行為がくさびとなり、言葉のとおり物事が進展していく。

岸田首相のいう、「新しい資本主義」の議論だけが先行していますが、何が実現されどう暮らしやすくなるのか、全体像が見えてきません。

単なる賃上げ実現なら、学び直し(リスキリング)という回りくどい手段より、企業に溜まっているお金を吐き出させる手はいくらでもあるはずです。

国民は、言葉だおれの構想より、具体的にどういう行為をしその結果がどう暮らしに反映されるかに関心があると思います。

その点、動物の世界は厳しく、縄張りが脅かされると、相手と戦って奪い返すか、新たな土地で縄張りを築くしか手はありません。

その日その日の行為が、明日の命を決めることになる。

政治家には、この緊張感を持って欲しいわけです。

ブッダの言葉は、そんな今の日本に喝を入れているようです。

 

有無相生

 

 

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