◆老子小話 VOL
1178 (2023.06.10配信)
難事必作於易、天下大事必作於細。
(老子、第六十三章)
天下の難事は必ず易きより作(起)こり、
天下の大事は必ず細より作こる。
梅雨というとジメジメして蒸し暑いというイメージですが、今の所、涼しく過ごしやすい梅雨です。
ウクライナではロシアがダムを破壊して大洪水を引き起こしました。
反転攻勢に対する防衛でやったにしてもやることが余りにも卑劣で、それに対しロシア国民が何の非難もしていないのが悲しい限りです。
今回の言葉は老子よりいただきました。
「世の中の難問題は必ず易しいことから起こり、世の中の大事件は小さなちょっとしたことから起こる。」
カオス理論のバタフライ効果として知られる、ブラジルの蝶の羽ばたきが、テキサスの竜巻を引き起こす現象を老子も注目しました。
ちょっとしたことが連鎖して、大きな事件を引き起こす。
韓非子の「蟻の穴から堤も崩れる」という言葉も同じ意味です。
皆、結果論でこの言葉の正しさを経験しますが、人類はいまだに同じことを繰り返している。
何故なんでしょうか?
難問題や大事件につながる原因という認識がないからです。
過去に同じような事象があったとしても、今回は違う、いや自分の場合は違うと思いたいのです。
過去に地震が起きて津波が押し寄せて大被害を経験した。
その教訓を学んで避難訓練を欠かさなかった人間は、同じような地震が起きたときも冷静に避難でき、津波から免れる。
今回は違うと考えて避難しなかった人間は、津波で命を落とす。
1回の訓練はちょっとした準備です。しかしそれを繰り返すことで、実際に災害が起きたときも身体が自然に動くようになる。
難事件や大事件につながる原因もちょっとしたことの積み重ねです。
そのちょっとしたことの重要性を認識していないと、人類は同じ過ちを何度も経験することになる。
始めにウクライナ戦争に触れましたが、この戦争の原因も為政者プーチンのちょっとした不信感の積み重ねにあるようです。
今となっては時間を逆戻りできないので、やはりちょっとした信頼感の積み重ねで戦争を収束する以外にないように思われます。
有無相生