老子小話 VOL 1177 (2023.06.03配信)

さみだれや 水に銭ふむ 渉し舟
(与謝蕪村) 

 

知らぬ間に梅雨の季節となりました。

台風が近づいて線状降水帯が発生し、大雨警報が出されるとともに、梅雨入りになったようです。

俳句の言葉では、さみだれ(五月雨)の季節です。

昔は陰暦だったので、陰暦の5月は今の6月にあたるため、そんなふうに呼んでいます。

今回の言葉は、さみだれを詠んだ蕪村の句をいただきました。

昔の旅は、川にはばまれます。

わたし舟で渡るしかありません。

梅雨の季節は川が増水します。

今の時代も、川の増水で新幹線が止まるくらいです。

川が増水すれば、わたし舟の料金は値上がりする。

川の流れが速くなれば、それだけ船頭のスキルが求められ、手間が余計にかかるからです。

他方、旅人は安い旅を求めるので、流れは大して変わらないから、値段すえおきにしろという。

そこで両者間で値踏み交渉が始まる。

あるいは、客が来る前に船頭が、川の流れを見ながら今日の料金はいくらにしようかと思いに耽っている。

そんな状況を蕪村は水墨画に描いているかもしれない。

船頭と旅人が登場すれば前者のケース、船頭だけなら後者のケースでしょう。

どちらにしても、さみだれと川の流れという動態と、船頭の値踏みしている静態は対照的な面白さを演出しています。

この句から、6月の値上げラッシュを連想しました。

さみだれは、値上げの原因となる、原材料費の高騰、ウクライナ侵攻、円安になる。

船頭は値上げしようとする企業、旅人(客)は値上げに反対の消費者。

一杯儲けようとする船頭(企業)は値段をふっかけるが、あまり高くすると客が離れてしまう。

値上げの原因を価格にどう反映するか、しかも客が離れないようにする価格にしようと思案する。

まさに、「水に銭ふむ」となります。

蕪村の句から、今の状況を連想してみる楽しみを見つけました。

 

有無相生

 

 

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