老子小話 VOL 1167 (2023.03.25配信)

春色無高下

花枝自短長

(禅語)

 

春色に高下なく

花枝自ずから短長あり

 

WBCで日本がアメリカに勝ち優勝し、興奮いまだ覚めやらずです。

とにかく全員野球で結果を出せたところに感動を覚えました。

今回は、禅語よりお届けします。

「春の光はすべてのものに分け隔てなく降り注ぐ。

花咲く枝にはそれぞれ長いものと短いものが自然と現われる。」

自然の景色を見たままを語る言葉です。

春の光は、万物に対し平等に施される。

そのエネルギーの恩恵にあずかり、万物は成長を遂げる。

しかし、その成長は平等とは行かず、それぞれの縁により格差が生じていく。

自然界では平等と差別が同時に発生していくという現実を見つめている。

禅語ですから、この言葉からどのようなメッセージを受け取るかは、皆様にまかされています。

年齢を重ねると、どうしても死に絡めてしまいます。

生まれたら誰しも必ず死ぬ。

これが死に対する平等感です。

そして、死までの時間は、縁により長短という差別が生じる。

これが死に対する差別感です。

この現実を突きつけられて、差別感に悶々としていては、生きるのがつらくなります。

かといって、この現実を忘れようとしても、他者の死に遇うたびに思い起こされます。

では、どうすればよいのか?

自己の死に直面したときに後悔しない生き方をするしかありません。

アウレーリウスが「自省録」で語るように、現在の瞬間が生涯の終局であるかのように生きること、

運命の糸が自分に織りなしてくれること(つまりは縁)のみを愛することに尽きると今考えています。

 

有無相生

 

 

戻る