老子小話 VOL 1165 (2023.03.11配信)

希言自然。故飄風不終朝、驟雨不終日。

(老子、第二十三章)

 

希言は自然なり。

故に飄風は朝(あした)を終えず、

驟雨は日を終えず。

 

今日は、東北大震災から12年目の日であります。

震災を及ぼしたのは自然であり、自然からのメッセージが人類に教訓を与えます。

そのメッセージに耳をすませというのが、今回お届けする老子の言葉です。

「聞き取れないほどかすかな言葉を発するのが自然のありかたである。

だから、さわがしいつむじ風も半日と続かず、うるさい豪雨も一日と続かない。」

自然は強大なエネルギーをもって人間の生活に被害を及ぼす。

地震でも津波でも暴風雨でも、生活時間のなかでは一瞬の出来事といえる。

のど元過ぎれば熱さを忘れるという言葉があるように、どんな甚大な被害があっても、自然の教訓は忘れ去られることがある。

それを老子は、希言、つまり「かすかな声(言葉)」と呼んだ。

大震災で発生した津波は福島の原発を襲い、核燃料を冷却するシステムが動かなくなったため、水素爆発を起こし、外部に放射性物質が放出した。

それにより原発近くの町村は核汚染され、住民はふるさとを追われました。

さらにトリチウム汚染した水を海に垂れ流すことになった。

原発の怖さを身に沁みて感じさせた震災でしたが、そのメッセージが今消えつつあります。

というのは、岸田内閣は、原発依存のエネルギー政策を今後も継続する方針を決めたからです。

人間というのはおかしな動物で、自分が生み出した原発の安全性というのを信じたがるようです。

自然がその過信に警鐘を鳴らしても、一時的に反省するだけですぐ忘れてしまう。

聖書にも「バベルの塔」の話があり、自身の技術を過信する人類への警鐘が鳴らされます。

人類の存続にとって、自然の発する希言は貴重な宝になります。

 

有無相生

 

 

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