老子小話 VOL 1163 (2023.02.25配信)

人之言曰、予無楽乎為君、唯其言而楽莫予違也。

如其善而莫之違也、不亦善乎。

如不善而莫之違也、不幾乎一言而喪邦乎。

(論語、子路第十三)

 

人の言に曰わく、予(わ)れは君たることを楽しむこと無し。

唯だ其の言にして予れに違うこと莫きを楽しむなりと。

如し其れ善にしてこれに違うこと莫くんば、亦善からずや。

如し不善にしてこれに違うこと莫くんば、一言にして邦を喪ぼすに幾(ちか)からずや。

 

ロシアのウクライナ軍事侵攻から1年が経ちました。

プーチンの年次教書演説では、西側がウクライナを使って戦争を仕掛けたといい、核戦力を使って対抗する意思を示しました。

大切なのはロシア帝国のみで、ロシアが行なうことに反対するすべてを敵とみなすという実に身勝手な発言を一国の大統領が吐いていること自体が情けない限りです。

今回の言葉は論語から選び、プーチンに捧げたいと思います。

「誰かの言葉に『わしは君であることを楽しむのではない。ただものを言って逆らうもののないことを楽しむのだ』というのがある。

もしもその言葉が善いことでそれに逆らうものがないのなら結構なことでしょうが、

もしそれが善くないことでそれに逆らうものがないのなら国を滅ぼすことに近いといえる。」

プーチンはロシアの君であり、権力にまかせて言論統制をしき、自分に反対するメディアを国外に締め出しました。

まさに自分に逆らうものが帝国ロシアにはいないことを楽しんでいる。

論語が書かれた2000年以上昔にもプーチンのような人間が居たということは、人間あまり進歩していないことの証しです。

世界大戦を2回もやって大いに反省をしたはずの人類ですが、核兵器を手に威嚇されると誰も何もいえなくなる。

しかし、論語で孔子はいう。

誰も逆らう者が居ない状態で、誰が聞いても間違っていると思うような言葉を吐けば、その一言で(ロシアという)国を滅ぼすことになる。

国を導く指導者としての君は、国際関係の中で協調しながら、自国の成長を維持していく役割を負う。

決して、自国だけがよければ何をしてもよいとは考えないはずである。

孔子は、権力を手中にした君の周りには、同調するものだけが集まり、何が正しいのかが自分でもわからなくなるという。

そのために誤った道をひたすら進み、もとに戻れなくなる。

それが国を滅ぼすということになる。

人間あまり進歩していないが故に、中国の古代思想は今も生きているようです。

 

有無相生

 

 

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